天狗山・男山
山行記録  [ back ]

フリガナ テングヤマ・オトコヤマ 
山域・山名 天狗山(1882m)・男山(1851m) 
日   時 1999年11月13日(土)から11月14日(日) 
天   候  
行   程 11月13日(土)
信濃川上駅(8:35)(タクシー)馬越峠(8:57)−天狗山(10:08-42)−男山(12:45-13:50)−林道へ出る(14:18)−舗装路(15:18)−信濃川上駅(15:41-50)−海ノ口「湯沢館」泊(16:10) 
所 在 地 天狗山 長野県南佐久郡川上村、南佐久郡皆南相木村
2.5万図 御所平 
緯   度 35.5918 
経   度 138.342 
備   考  


 須玉から国道141号線(佐久甲州街道)を軽井沢方面に向かって走って行くと、野辺山を過ぎた辺りから右手に尖った山頂と岩肌が個性的な天狗山と男山が見えてくる。
 八ヶ岳連峰や奥秩父の金峰山、瑞牆山に挟まれてその存在が見落とされがちな地域に有って、尚その存在を誇示しているかのような山である。
 男山は千曲錦と並んで地酒の名前にもなっているので、信濃川上を代表する山に違いない。
 始めてこの山の存在に気が付いたのは、今から数年前、金峰山に登った帰りであった。暮れゆく中に山裾を黄色く染めるカラマツの紅葉が美しく、盛り上がった山頂が実に印象的であった。
 3年前にも一度シャクナゲを目当てに出掛けたが、生憎と天気が悪く十文字峠に変更してしまい、登らずに終わってしまった山であった。
 今回は秋も深まりを増す中、ちょっぴり紅葉を期待しながら朝5時にいつものように出発して天狗山と男山に向かった。

奥秩父方面

 昨日降った雨が富士山では雪に変わり、朝霧高原から見上げるとかなり下まで白くなっている。やはり富士山は雪化粧した姿が一番美しい。
 おそらく標高の高い所では雪になっているので、かなりの展期を待出来そうな予感がする。
 甲府南から中央高速に乗って朝食の為に二葉杉本Aに寄ったが、レストランはまだ営業しておらず、トイレだけ済ませ、須玉ICで高速を降りて、国道141号線をしばらく走ってコンビニで朝食と昼食を買い、コンビニの駐車場で朝食をとった。
 天気は最高で青空が広がっていたが、野辺山を過ぎた辺りから天狗山と男山を眺めると、丁度その付近だけに霧がかかっている。

 信濃川上駅の村営駐車場に車を止めて、各自トイレと出発準備をすませ、タクシーを呼ぶために電話をした。
 5人なんですがすぐにありますかと尋ねると、中型でなくジャンボになりますと言われ、料金を聞くと、大体5200円位だと言っている。
 予約をして駅前で待っていると、やって来たのは見るからに貧相なジャンボタクシーである。タクシーと言うよりは貨物車と呼んだ方がいいような車であった。
 車内で杉本さんがこの辺りには中型車は無いですかと尋ねると、林道で擦れ違う時に腹を擦ってしまう事があるのでジャンボでお願いしましたと訳の判ったような判らないような事を言っている。
 この辺りの山はカラマツが多く、里に近い方はまだ黄色く紅葉していて、車窓から眺めているととても綺麗である。
 林道に入り途中で数台の工事用大型ダンプと違って馬越峠に到着した。
 それにしてもさっきの林道何処に腹を着きそうな箇所があると言うのか。そんな箇所は何処にも無かったように思うのだが・・・

 タクシーを降りて周りを見渡したが霧の中で何も見えないし、少々肌寒い感じもする。出発前に一枚余分に着て馬越峠から登山道に入って行った。
 最初からいきなりの急な登りで、慣れない体にはちょっと辛いがこの急な登りもすぐに終わって稜線に出る。
 ここからは平坦な登山道で晴れていれば素晴らしい展望だが、相変わらず周りは霧に包まれていて展望はゼロである。
 シャクナゲの葉が茂る中を進んで行くと大深山遺跡からの登山道と合流して、天狗山に向かって岩の間を登る事になる。
 シャクナゲの数もだんだんと増えて登り坂も急になり、息が荒くなった頃天狗山に着いた。

 ザックをおろして、少し長めの休憩を取りながら景色を眺めて見ると、霧は下から上に向かって移動しては消え、又下から上に向かって移動しては消える事を繰り返している。
 しばらくするとパッと霧が消えて、眼下に広がる景色が急に見え始めた。下にゴルフ場が見えて、金峰山方面も見え始めている。ここまで来て急速に天気は回復の兆しを見せている。このチャンスを逃してなるものかと、曽我さんと私は慌ててカメラのシャッターを切った。
 この後も霧は我々にまとわり付くように晴れては消える事を繰り返し、なかなかすっきりとは晴れ上がってくれる気は無いようだ。
 藤生さんが持って来たコーヒーを大谷さんが担いで来たお湯で作って皆で飲みながら霧の晴れるのをしばらく待っていたが、晴れそうもなく、重い腰をようやく上げて男山に向けて出発する。

 前方にこれから登る男山がもっこりと山頂付近を盛り上げて見えている。まだかなり時間がかかりそうだ。
 昨日の雨で滑りやすい登山道を慎重に一旦下り、切り立った岩壁を巻くように進むと又シャクナゲの群落がしばらく続く。
 大きな岩が重なりあっている場所を両手両足を使って下りきると、大深山遺跡に下る道が現れた。天狗山だけに登るのであれば大深山遺跡からぐるっと一週する事が出来るようだ。
 やせ尾根や切り立った岩壁など、天狗山からちょっとしたスリルを味わいながら歩いて来たが、ここから先はしばらく平坦な道が続いている。
 小腹も空いた事だし景色の良い所で休憩を取ることにした。

 天気は回復して、先程までの霧は完全に消えて無くなっている。振り返って天狗山を望めば、よくあの急な坂を下って来たもんだと自分自身で妙に感心してしまうほどだ。
 富士山もようやく確認する事が出来たが、この場所からだと鉄塔が著しく富士山の美観を損ねている。 

 男山まではまだしばらくかかりそうだが、登山道は今までと違い平坦で歩きやすい。
 天狗山遺跡への標識を過ぎて登り坂になり、再び緊張感を伴う登山道となって最後の急登を登り切れば男山山頂である。

 山頂には既に登山者が1人おり、今日我々が出会った最初の人であった。
 山頂に立って歩いて来た道を振り返ると天狗山が大きく突き出ている。よくあんなところから歩いて来たものだと思いつつ、周りの景色を眺めると、金峰山の五丈岩、瑞牆山の奇異とした山容、大きくて整った形の富士山、白く輝く南アルプス、間近には八ヶ岳が横たわり、浅間山も見えている。すぐ後ろには御座山と360度の展望が素晴らしい。
 風もなく、暖かで曽我さん、杉本さん、大谷さんは午後の昼寝としゃれ込んでいる。誰とは言わないがいびきをかいて寝てしまっている。
 私はカップラーメンを作って食べた。それぞれが思い思いに山頂気分をゆっくりと味わい写真を撮って山頂を後にした。

 一旦鞍部まで戻って信濃川上に向かって急な坂を下って行く。鞍部まで戻る途中で今日2人目の登山者と出会う。
 鞍部から林道まではかなりの急坂で、落ち葉で埋まった道は濡れていて滑るので下山するのに苦労する。

 ようやく林道に出て、カラマツの落ち葉が綺麗に敷き詰められた絨毯のような道を5人で黙々と歩いて行く。完全に舗装された道だとちょっと興覚めだが、最後まで未舗装であったのは有り難かった。

 林道が終わって信濃川上駅はどちらの方へ向かえばいいか判らず、ちょうど目の前に綺麗な建物が建っていて、そこから出てきた若い女性に駅の場所を尋ねると、その女性も出掛けるところだったらしく、一緒に行きますかと何とも有り難いお言葉。私達を乗せていってくれるつもりらしい。
 しかし我々は5人なので折角だけど断った。後で考えてみたら誰か1人乗せていってもらい、車を回送してくればよかったようにも思えたが、我々は歩くためにやって来ているのだからそんなに楽をしたってしょうがない。

男山山頂にて

 教えられた通り千曲川沿いの車道を進んで行くと川沿いにものすごく大きな墓が建っている。何処の墓をみても皆大変立派で驚くばかりである。墓の後ろに斜面をくり貫いて作られた扉付きのものまであるくらいだから、この辺りの人達は先祖を大切にしているのだろう。
 こんな墓を見ることが出来たのも歩いていればこそである。車で通り過ぎてしまえば見過ごしてしまうに違いない。
 千曲川に架かった橋を渡って右折し今日登って来た天狗山と男山を見ながら信濃川上駅に無事到着。
 今日1日我々以外には2人だけにしか会わず、大変静かな山を味わう事が出来た。

 西に傾いた太陽に照らされている男山を見ながら本日の宿泊地、海ノ口温泉湯沢館に向かう。
 この旅館以前杉本さんと2人でスキーに来た時に泊まった事のある旅館である。
 フロントで受け付けを済ませ、部屋に通され休む事もせずに、早速風呂に入りに行く。
 前に泊まった時はぬるかった記憶があるが今回はちょうどいい湯加減であった。
 今日1日がんばってくれた体をゆっくりと温泉に浸けて疲れを癒し、お楽しみの食事へと向かう。

 夕食はすき焼きである。予約の時に鯉料理はやめてもらいたいとお願いしてあったので鯉の代わりに刺身を用意してくれてある。
 冷たいビールで乾杯し、日本酒の熱燗を飲んで夕食後、部屋に燗酒を3本注文し、それを飲んでもう一風呂浴びに行った。風呂場にある窓を開けるととても寒い。慌てて閉めて浴槽に沈んだ。
 風呂から上がって今日は朝早かったので布団にもぐってすぐに寝てしまう。

 何だか寒くて目が覚めると夜が明けていた。今日も天気は良さそうである。着替えて朝食を済ませ、モーニングコーヒーを飲んで出発する。

 玄関を出て車を見るとがちがちに凍り着いてしまっている。エンジンをかけて、ヒーターを全開にしてフロントガラスの氷が解けるまで暫く時間がかかる。この辺りはもうこんなに寒いのかとあらためて驚いてしまった。

 天気もいいし展望の良いところに行こうと美しの森に向かう。右手には八ヶ岳の姿がくっきりと見えている。頂上小屋も展望荘も見える。
 美しの森に着いて車を降りて、展望台に向かう途中でこの先のスキー場でリフトが動いていればその方が景色がいいかもしれないと、車に戻ってスキー場に向かったが生憎と休業中で、その上の駐車場まで行って景色を眺めた。

男山山頂から八ヶ岳方面のパノラマ

 スキー場の中を歩いて展望台まで行くことも考えたが、勝手に歩いてもよいものかどうか悩んだ末に天女山に向かう事にした。

 天女山の駐車場に車を止めて、賽の河原まで行って景色を眺めたが、金峰山方面は白っぽくなってしまってあまり良い眺めではない。南アルプスは白く大きく見えている。

 天女山を出てどうしても曽我さんが行きたがっていた増富へと向かう。数年前に瑞牆山に登った時に見た渓谷沿いの紅葉が忘れられないらしい。
 瑞牆山登山口周辺は駐車車両が路肩にまではみ出していて、多くの登山者が登っているらしい。さすが日本百名山、人気の高さをものがったている。
 この周辺の紅葉は既に遅く、増富温泉周辺までくると木々が色鮮やかに染まっていて綺麗である。
 車を降りてしばらく歩いてみる事になり、杉本さんに無線機を渡し、連絡を取りながら、時間を置いて私が車を回送する事にした。
 無線連絡が入り、増富温泉の無料駐車場まで取り合えず車を移動して、そこで又しばらく時間を潰して、全員を迎えに行き、車に乗せて走り始めると途中で又素晴らしい所があり、路側帯に車を止めると、曽我さんはカメラを持って飛び出して行った。
 この先の渓谷沿いにも紅葉の素晴らしい所があったが、寄らずに通過してトンネルを出ると瑞牆湖の横にドライブインのような建物が建っていたので、ここで昼食にした。

天狗岳とその奥に奥秩父の山並み

 この後天気もいいし時間もまだ早いので、簡単に登れる入笠山に向かった。
 登山口には1台だけ車が止まっている。山頂まではすぐなので簡単な荷物だけを持って登る事にした。
 予想通り山頂からの眺めは最高で、南アルプス、八ヶ岳、北アルプスの穂高、槍ヶ岳、、白馬岳、乗鞍岳、そして御嶽山方面の山々とまさに大展望である。
 林道のおかげで、あまりにも簡単に登る事が出来てしまう為に少々物足りなさを感じるが、わずか30分でこの展望が得られる場所はそう多くはないだろう。

 今日1日あっちへ行ったり、こっちへ来たりと走り回って、まだ1度も寄った事の無い上九一色村にある上九の湯で入浴(1人700円)し、2日間の日程を終了した。 


[ back ]