天女山ー美し森
山行記録  [ back ]

フリガナ テンニョサン・ウツクシノモリ 
山域・山名 天女山(1529m)・美し森(1548m) 
日   時 1998年11月23日(月)  
天   候  
行   程 甲斐大泉駅(9:55) (タクシー) 天女山登山口(10:05)−天女山(10:37-11:00)−天の河原(11:18-28)−天女山(11:40)−林道(11:48)−牧場(12:00)−展望所(12:26-13:23)−羽衣池(14:15)−たかね荘(14:28)−美し森展望台(14:36)−美し森駐車場(14:43-15:00)(タクシー)清里駅(15:10-25)(電車)甲斐大泉駅(15:34) 
所 在 地 山梨県北巨摩郡大泉村 
2.5万図 八ヶ岳東部 
緯   度 35.5504 
経   度 138.2408 
備   考  


 葉の落ちた雑木林から木漏れ日が射し込み、落ち葉を敷き詰めた小道をサクサクと踏みしめながら、本格的な冬を迎える前に八ヶ岳南麓の高原散歩と洒落込むつもりだったのだが…。山はいつも予期せぬ出会いが待っている。

天女山から瑞牆山、金峰山方面を望む

 今回の山行は曽我さん、中野さん、そして私の3名で、このメンバーによる山行は今回が初めてである。
 6時30分に曽我さんに迎えに来てもらい中野さんを乗せて、本日の目的地八ヶ岳を目指して出発する。
 途中朝霧高原から見る富士山は昨日降った雪で白くなっており、毛無山塊も雪化粧していてとてもすばらしい景色が広がっている。
 ところが、甲府まで来るとだんだん霧が濃くなって、景色が見えなくなってしまった。この先長坂ICまでついに霧は晴れず、今日の山行が思いやられて気分が滅入ってしまう。
 長坂ICに到着して料金を支払うために通行券を探すと、確かに灰皿の下に置いてあったはずなのに見当たらない。足元にでも落ちたのかなと料金所の手前に車を止めて足元をくまなく探してみたが見付からない。
 通行券は一体何処へ消えてしまったのか!まさに真昼のミステリーである。なんて事はあるはずもなく、灰皿の下に入り込んでしまっているだけであった。しかしこの通行券を取り出すのはそう簡単にはいきそうも無い。かすかに見えているのをたよりに手を入れてみたがダメである。
 最後の手段とドライバーでネジをはずしにかかると、料金所の人に「どうしたのか?」と声を掛けられる。「通行券が取れなくなってしまって」と答えると、その人は物差しとガムテープを持って現れた。物差しにガムテープを貼り付けて、隙間から差し入れガムテープに通行券をくっ付けようという作戦だ。なかなか頭がいいじゃないかと感心しながらやってみると、なるほどうまくくっ付いて取り出すことが出来た。
おそらく我々以外にも結構こういうことをする人が多いのかもしれない。参考までに付け加えておくと、もし通行券を無くしてしまった場合は、ICの入り口で写真を撮っているので何処から乗ったのか調べれば判るのだが、書類を書かなければならないと料金所の人が言っていた。

 ようやく長坂ICを出てみたが相変わらず周りは霧の中。上から降ってくる車をみて中野さんが、「屋根に一杯雪を積んだ車が走って来るけどどこから来たのかしら」と言っている。その時はあまり気にも留めなかったのだが、しばらく進むと突然霧が晴れて青空が広がり、辺りの景色が一変、両側にはなんと雪が積もっている。

 

出発の甲斐大泉駅前にて

甲斐大泉駅に車を止めて、辺りの景色を見渡すと雪を被った山々がずらっとならんでいる。さっきまでの気分などどこかに吹き飛んでしまって絶好のハイキング日和である。
 しかし雪は予想していなかったので、私と中野さんはアイゼンも用意していなければ靴まで布製である。曽我さんはちゃんとスパッツとアイゼンを用意して来ていた。

 甲斐大泉駅から電車に乗って清里駅まで行く予定だったのだが、電車の時間までかなりあるし雪も積もっているようなのでここからタクシーで天女山まで行き、帰りは中野さんがどうしても高原列車に乗ってみたいと言うので清里から電車で戻ることにして、当初予定したコースを逆に辿ることにした。

 いよいよ「初冬の八ヶ岳スノーハイク編」の出発である。

 公衆電話で呼んだタクシーに乗って天女山登山口を目指す。運転手に聞いたところ、こんなに早く雪が積もる事はまず無いそうである。12月一杯はまず積もる事など無いとの事で、我々は思いがけない新雪に出会えて実に幸運である。
 途中スコップを持って雪かきをしている人達がいる。運転手があれは柳生博だと言う。週に4日位はこちらで生活しているらしい。
 この先で前の車が止まってしまう。なにかと思えば雪で走れないらしい。ばかにゆっくり走っているので運転手が「雪で走れないのかなぁ」と自信ありげにつぶやくので、てっきりこの車は雪用のタイヤをはいているのかと安心していると、同じ場所で尻を振り始めるではないか。挙句の果てに「あぁ滑った滑った」などと暢気な事を言っている。
 ようやく天女山登山口まで来ると「この先は雪で行けませんのでここまでです」と言われてタクシーを降りる。

 林道の脇に天女山登山口と書かれた矢印の方へ入るといきなり10センチ位雪が積もっている。新雪なので真っ白でとてもきれいである。曽我さんと中野さんはここでスパッツをつけて歩き始める。
 キュッキュッと雪を踏み締めながら階段状の道を登っていくと、登山道は雑木に囲まれたなだらかな道になって、葉の落ちた雑木の間から南アルプスが見えている。時々雑木の枝に付いていた雪が風に揺れてさらさらと落ちて舞っていく。

 さほど時間もかからずに天女山に到着。数組の観光客が写真を撮っており、あずま屋にザックを置いて周りの景色を眺めると大変すばらしい。ただしこの場所は遮るものがないために風が強く、帽子が飛ばされてしまいそうである。目前には編笠山と権現岳がせまりかなりの迫力だ。

天女山からみた権現岳

 あずま屋で休憩していると、お爺さんがこの先の天の河原の方が景色がいいよと教えてくれる。このお爺さん長靴に毛糸の帽子をかぶったいでたちで、ポケットからおもむろに缶を取り出して蓋を空け、中から飴玉を取り出すと口の中にポンと放り込んだ。毎日天の河原まで登って散歩しているそうで、顔色といい動作といい何歳か判らないがとても元気そうである。

 お茶を一杯飲んで早速天の河原へ向かって歩き始めるとすぐに駐車場がある。朝タクシーを下ろされた林道はここまで登ってこられるのである。ここからすこし登ったところが天の河原である。

 なるほど先程の天女山よりも眺めがいい。360度遮る物がなにもない。南アルプスの甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳、鳳凰三山、富士山、茅ヶ岳、金峰山、瑞牆山と真っ青な空の下に雲海から浮かび上がって見えている。ガイドブックには載っていないのであのお爺さんに会わなければこのすばらしい景色は見られなかった。しかしここも風が強いので写真を撮ってすぐに引き返す。

 天女山まで戻り、階段状の降りを慎重に降りていく。日が当たらないせいか、雪が大変多い。
 曽我さんはここでストックを取り出して両手両足で降って来る。新雪なのでアイゼンは必要がない。
 一旦林道に出て横切り、登山道に入り直し、降りきると川俣川西沢である。普段は水が枯れているらしいのだが、今日は結構水量がある。おまけに石の上には雪が積もっており、滑って落っこちるとこれから先かなり冷たい思いを強いられるので慎重に渡る。

 中野さんは曽我さんのストックを借りて川幅の狭い所へ移動して、石の上に積もった雪を「おどき!」といいながらストックでどかして渡って来た。この先で牧場に出るとなにやらレストハウスが見えている。こんなに近いわけ無いなと思っていると3人の親子連れがやって来る。この人達は我々の逆コースを辿って来た人達で、今朝の雪であちらこちらで事故が発生し渋滞で走れないのでペンションの人に送ってもらったと話していた。

 広々とした牧場は牧柵でかこまれており、柵に沿って歩いていく。雪が積もっていて牛の姿もない。牧場の中の小高い丘が展望台になっており、ここから権現岳と赤岳がよく見える。
 相変わらず風が強いので、どこか風の当たらないところで昼食にしようと思っていると、この先に松の木がありその下がちょうど雪もなく、風も当たらないので腰を下ろして昼食にした。

 鍋に水を入れてお湯を沸かし、たまごスープの素ともちを入れて煮込んで食べる。
 中野さんがしょうゆの顆粒を持ってきたので使えと頻りに進めるので、曽我さんの持ってきた卵に振りかけて食べてみたが、アンマンを食べた後で味がよくわからず、そのまま薬のように流し込むと確かにしょうゆの味がした。

 だいぶゆっくりしてしまい時間通りに清里駅に着けるか心配になってきた。

雲海の向こうに浮かぶ富士山と右手に鳳凰三山

 牧草地の中を進んで行くと、金峰山と水牆山が正面にきれいに見えている。この牧草地の中を抜けて清里駅まで行く道が伸びている。時計と睨めっこをして当初の予定通り美し森目指して進んでいく。
 雪の量が一段と多くなっている登山道を進んでいくと、所々で道を真横に横切っている獣の足跡を発見。猪なのか鹿なのか、突然の雪にやはりビックリしたのだろうか。
 この先又林道を横切って羽衣池の標識の方へ向かって急な坂を登っていく。樹林の中を進んでいくと水のない羽衣池がひっそりと現れる。ここから赤岳への信教寺尾根が伸びている。あまりにも味気ないので写真も撮らずに通過する。

 雪の積もった階段状の道を滑らないように降っていくとたかね荘が建っており、その先が美し森頂上。
 風が強く観光客が写真機を持って記念撮影をしている。このすぐ下が駐車場である。
 昼食以外あまり休憩も取らずに歩きつづけて来たのでかなりの距離を歩いた感じがする。建物の中に入って早速タクシーを呼んで、来るまでの間、貼ってある地図で今日の行程を確認すると確かにかなりの距離を歩いている。曽我さんの万歩計で1万8千歩と言う事だ。

 迎えに来たタクシーで清里駅まで行くと、列車の本数が少ないせいかホームには多くの人が待っている。電車が入って来て乗ろうとすると一杯で乗れない。
2両目が乗れそうなのでようやく乗り込んで走り始めると「次の甲斐大泉では1両目以外の車両はドアが開きません」と車内アナウンスが流れる。「えぇー」と慌てて人込みをかきわけて1両目に移って満員電車に揺られて車窓から流れる山並みをのんびりと眺めることも出来ず、中野さんが是非乗って見たかったという高原列車も風情なく甲斐大泉駅に到着。

 荷物を車に積み込んで鹿の湯へと向かう。いつ来てもいい風呂である。汗を流してさっぱりしたら、何処かでそばを食べて帰ろうと小渕沢ICへと向かったがそば屋がない。インター近くまで行ったがありそうも無いので引き返してみやげ物屋風の店で山菜ソバを食べて、小淵沢ICから高速に乗って無事に帰宅する。
 天気よし、景色よし、風呂よし、おまけに初雪と四拍子揃った高原散歩であった。


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